誰もが経験のあるダイエット。そして誰もが経験のあるリバウンド。太るのは簡単ですが、痩せるのはなかなか難しいですよね。特に、これまでの食生活を見直し、「食べたい」誘惑に打ち勝つことは大変なものです。

そもそもなぜダイエットは難しく、こんなにも多くの人が挫折してしまうのでしょうか。それは、脳に原因があったのです。今回は、脳が私たちに与えている影響に触れながら、なぜ食生活を見直すことがこんなに難しいのかについて徹底解説したいと思います。

脳がダイエットを邪魔する理由

この記事を読まれているあなたは、「ストレス太り」や「リバウンド」という言葉を聞いたことや、実際に体験されたことがあるかもしれません。私たちの脳の性質上、ストレス太りやリバウンドは仕方のないことなのです。「意思が弱いから」と自分を責める必要はありません。ここでは、脳がいかにダイエットの邪魔をしているのかについてお伝えしたいと思います。

ストレス太りの謎

「ストレス太り」という言葉があるように、食欲はストレスに影響を受けます。仕事や人間関係などでストレスを感じた時に、衝動的にケーキやポテトチップスなど甘いものや油っぽいものが食べたくなったことはありませんか?実験動物のマウスも、ストレスを与えると、逃避行動として餌を食べすぎて太ることがわかっています。また、ダイエット中にダイエット自体がストレスになって、つい暴飲暴食したくなってしまうということもあるかと思います。

これは、脳がこのような食事をとるように私たちに命令をしているからです。甘いものや油っぽい食品には、脳が喜ぶ物質(塩分や、うま味の添加物であるLグルタミン酸ナトリウム等)がたくさん含まれているため、食べると幸せな気分になれるのです。そのため、脳が無理やり命令して食べさせようとするのです。

リバンドは当然

短期間で一気にダイエットに成功しても、体重が元に戻ってしまったり、元の体重より太ってしまう、いわゆる「リバウンド」が起こる理由。これも実は脳のはたらきが影響しているのです。

脳は現状維持が大好きです。「体重減少は生命の危機」と脳が捉えると、脳は体を元の状態に戻そうと必死になります。リバウンドしてしまうことで、「自分はだめだ」と自暴自棄になってしまうこともあるかもしれませんが、脳の性質を考えると、リバウンドは実はむしろ自然なことなのです。

美味しいものに惹かれてしまう原因、報酬系とは

人や動物が「食べたい!」という欲求で満たされる時、脳の中の「報酬系」と呼ばれる部分が活性化しています。食欲だけでなく、満足感や喜びを引き起こすもの、例えば麻薬やお酒、恋愛などを求めてしまうのも、この報酬系のはたらきが原因です。脳は満足感や喜びを引き起こすものを与えられると、その幸福を再び感じたいと求めるようになります。

例えば、「美味しい」という感覚を脳が感じると、脳内伝達物質のドーパミンやセロトニンが増えて快楽中枢が刺激されます。脳はこれを繰り返し求めてしまうため、依存や中毒を引き起こしてしまうのです。

簡単に騙される脳

脳がストレス太りやリバウンドを指令しているのなら手の打ちようがないと思われてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。確かに、幸福や快楽を感じるために食欲までコントロールしてしまう脳は厄介ですが、実は脳は騙されやすいという特徴を持っているのです。

ハーバード大学やタフツ大学の研究者らが、健康的な食品を好むように脳を鍛えることができるか実験をしました。13人の肥満者を被験者とし、8人は減量プログラムに参加、残りの5人はコントロールグループとしてこの減量プログラムには参加せずに、6か月間過ごしました。実験の最初と最後にMRIで被験者の脳の状態を調べると、減量プログラムに参加した被験者の報酬系を司る部分が変化していることが分かりました。健康的な食べ物を好み、不健康な食べ物にはあまり反応を示さなくなっていたのです。

このことから、健康的な食生活を続ければ続けるほど、リバウンドやストレス太りで問題となる不健康な食べ物を欲さなくなっていくということが分かります。意識的にヘルシーな食生活を続けていけば、脳がヘルシーな食べ物を欲するようになるのです。ケーキやポテチを食べるときのような満足感を、野菜やナッツなどのヘルシーな食べ物で得られるようになったら素敵ですよね。

腸の声をよく聞きましょう

リバウンドやストレス太りを避けるために脳を騙すことができるとお伝えしましたが、健康的な食事を食べているつもりでも、ストレスなどで無意識にジャンクなものを選択してしまったり、気づかずに食べる量が増えてしまうなんてこともありますよね。こんな時、不健康な食生活になってしまっていることに気づかせてくれる大切な臓器があります。それは腸です。脳とは違い、腸は食べ過ぎてしまった日には腹痛を起こし、便の色や形を変えて、私たちに体の状態を教えてくれます。毎日腸の声に耳を澄ませることで、暴飲暴食をしてしまっている自分に気づくことができます。

食生活が偏っている、不健康になっていると気づけたらこっちのものです。意識的にヘルシーな食生活に切り替えてみてください。これを繰り返していくことで、脳は徐々に健康的なものに満足感を覚えるようになり、自然と暴飲暴食をしなくて済むようになります。

ダイエットがうまくいかない時は脳の性質を思い出してみましょう

これまでダイエットが続かない、うまくいかない理由が脳にあることを解説してきました。最初は順調にいっていたダイエットも、停滞したり逆戻りしてしまうことがあります。結果が思うようについてこないと焦りますしモチベーションを維持することが難しくなりますよね。また、せっかく頑張ってきたのに何らかのきっかけで派手に暴飲暴食をしてしまって、もうすべてが台無しになってしまったような絶望的な気持ちになることもあると思います。

ですがそれは、決してみなさんの意志が弱いからではありません。本記事でご紹介したように、暴飲暴食や高カロリーなものを食べたいという欲求は、意志の強さではなく、脳のはたらきが関係しているせいなのです。ダイエットがうまくいかずに気落ちしてしまう時は、自分を責めず、ぜひ本記事を読んで前向きにとらえるようにしてみてくださいね。